
WANDERING IS THE NEW GROUND
放浪は新たな境地
― Steve Shota Inataniが語る、“旅するように生きる”という選択肢と「ゼロプレイス」思考
Text by XANY.MAGAZINE Editorial

放浪は新たな境地
かつて“ノマドワーカー”という言葉がトレンドとして取り上げられた時代があった。ラップトップ(ノートPC)片手に世界を旅し、どこでも仕事ができるという自由な生き方は、SNSを通して多くの人々に幻想と希望を与えた。しかし、そのスタイルが“特別なもの”でなくなった今、私たちは改めて問い直す必要がある。
本当の意味での「自由なライフスタイル」とは何か?
私は、旅と共にある生き方を体現しながらも、それが単なる放浪ではないことを教えてくれる存在だ。かつてはスポーツで、現在はビジネス、クリエイティブ、エンターテインメントの最前線で生きている。そのライフスタイルには、「敢えてブレる」という、ブレない軸と確かな哲学がある。

“旅”は、居場所を広げる手段になった
「昔のノマドは“どこにも属さない”という印象だったけど、今は逆に、“どこにでも居場所を持てる”時代になったと思った」
現在、私自身の家族と共に国内外を移動しながらも、暮らしを成立させ、仕事の拠点を複数に分散させている。そこには、子どもの教育、パートナーのライフバランス、チームとの連携といった、多面的な調和がある。
「完全に定住しない生き方を追い求めるというより、“複数のホームを持つ感覚”が今の僕たち家族にはしっくりきています。ひとつの都市だけに縛られず、でも、どこに行っても自分のリズムが保てる。これは新しい“定住”の形かもしれません」

「ゼロプレイス」思考が支える、バランスと創造性
我々が提唱する「ゼロプレイス」思考とは、どこかに“根を張らない”のではなく、“どこでも根を張れる自分”であること。その柔軟さと自己内面の安定性こそが、旅する人生を可能にしている。
「“ここが居場所”と限定することで、人は動けなくなることもある。逆に、“どこにいても自分でいられる”というマインドがあると、どこに行っても自然体で、クリエイティブでいられる。ゼロプレイスは、場所を持たないことの不安を、自由に変換するための考え方です。」
それは、XANY.が打ち出しているXANY.FOLKのコンテンツ「ONE PROJECT」の根幹にも流れている思想であり、これから確実に伸びる分野をドストライクにキャッチできていると確信している。

“旅をしながら生きる”は、これからの「定住」のあり方
デジタル化が進み、働き方も価値観も多様化した現在。従来の「ライフスタイル」に固執しない柔軟な姿勢は、むしろ次世代に必要な選択肢となっている。旅をしながら暮らし、創造し、繋がる。そのベースにあるのは「どこでも自分の価値を発揮できる」という自己確立であり、そのための“設計”と“準備”を、私を注視している。
まさに、今はXANY.の仲間たちとも、“旅するように仕事する”というスタイルを一緒にデザインしている最中です。場所に縛られないだけでなく、むしろ“どこにでも溶け込める自分”をつくる。その柔らかさこそが、これからの強さだと思います。

最後に
かつて“移動”は不安定さの象徴だった。しかし今、それは豊かさの証明になりうる。
私の旅する生活は、単なるノマドではない。家族と、仲間と、自分自身と調和することで、複数の“HOME”を生み出す。これは新しい“定住”の形であり、これからの時代をリードする“流動的な安定”なのかもしれない。